
はじめまして、テンハート訪問看護ステーション看護師の近藤と申します。
今回から私もブログの更新を担当させていただくことになりました。
「看護師の働き方」をテーマにした記事を書いていこうと思うので、よろしくお願いします。
初回は、「ワークライフバランス」をテーマに取り上げてみたいと思います。
よく耳にする言葉ですが、じっくり意味を考えたことがありますか?実はあまり詳しくは分からない…という方も多いのではないでしょうか。
そもそもワークライフバランスって何?
ワークライフバランス(Work Life Balance=WLB)とは、1980年代にアメリカで生まれた考え方です。統一した定義はありませんが、「仕事と仕事以外の活動がバランスのとれた状態であること」、もう少し詳しく言うと、「仕事・家庭生活・地域活動・自己開発などのどれも諦めない生き方ができる社会を目指す活動」です。
日本では2007年に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定され、ワークライフバランスという言葉が一般的に使われるようになりました。
ワークライフバランスという考え方の普及には、女性の社会進出や少子化などの社会的背景が大きく関わってきました。そのため、「仕事以外の活動」とは育児・介護などが注目されがちですが、本来は自己研鑽や趣味・地域での活動などを含めた全ての生活領域を指します。また、仕事と生活のバランスは「どちらが長ければいい」ものでも、「半々にする」というものでもありません。
各個人のライフスタイルによって異なり、ライフサイクルの中で変化していくものなのです。
ワークライフバランスとは、仕事と生活のバランスをその人に合ったものに整え、両者の間に相乗効果を与えようという取り組みであって、ただ「1日の仕事の時間を減らして生活時間を増やす」ということではないのです。
看護師の労働環境 なぜ看護師は離職してしまうのか?
現在、看護の現場は慢性的な人員不足に陥っている場合が多く、思うように休みが取れない、残業が多いなどの過重労働が問題になっています。
看護師不足の原因は供給量の不足ではなく、離職率の高さにあると言われています。日本の看護職の年齢階層別の就業率は、20代後半から30代にかけて急激に低下します。その背景には、医療の高度化・専門化・複雑化による責任の増大、医療保険財政の厳しさによる人件費の抑制、不規則勤務による身体への負担などがあります。
医療技術の進歩によって患者の救命率は向上し、一方で平均在院日数は年々短縮しているため、入院患者のうち重症者が占める割合が増えていきます。看護師の多くは、患者の生命を左右しかねない処置に関わる強い緊張とストレスを抱えながら業務を行っているのです。
離職者が多い現場では、残ったスタッフが日常業務を担うことになり、加えて新人を多く採用することになるため新人指導の負担も増します。それが原因で新たな離職者が出るという悪循環が生じ、せっかく養成した看護師が数年で離職してしまうという状況が後を絶ちません。この悪循環は、結果的に「看護の質」「医療の質」の低下を招き、患者にも病院にも不利益を生じることになってしまうため、日本の医療にとって大きな課題となっています。
多様な働き方の実現に向けて
こうした状況を受けて、日本看護協会は個人のライフサイクルに応じて働き方を選択できる「多様な勤務形態」の普及に取り組んでいます。「看護師はフルタイムで夜勤までこなすのが一人前」とされてきた従来の風潮が変わりつつあるのです。
勤務形態には、働く時間の長さが選べる(短時間正職員や変形労働時間など)、働く時間帯を選べる(時差出勤やフレックスタイムなど)他、交代制の働き方が選べる、業務にバリエーションをつけるなど色々なものがあります。
また、看護師が活躍できる場所は病院以外にも多様に広がっています。急速な高齢化の進行や病院の入院期間短縮によって、訪問看護や高齢者向け施設での看護は今後ますますニーズが高まると予想されます。産業看護師の他、製薬会社や医療機器メーカーなどの企業で働く看護師もいます。
1人1人の看護師が、こうしたたくさんの働き方から自分に合ったものを選択し、ワークライフバランスを整え、離職せずに働き続けることができるようになれば、看護師不足の悪循環を断ち切ることができ、ひいては日本の医療の質の向上にも繋がるでしょう。
だから今、看護師のワークライフバランスを考えることが大切なのです。
次回からは、看護師の多様な働き方について、具体的に紹介していきたいと思います。
参考:
日本看護協会 看護職のワーク・ライフ・バランス https://www.nurse.or.jp/wlb/index.php
ナースの働きかたハッピーガイド:Smart nurse Books 編集室/メディカ出版
東京都 TOKYOライフ・ワーク・バランス http://www.tokyo-wlb.jp/

